社会保険手続…定時決定等における保険者算定の基準が見直されました。

 毎年7月1日から7月10日までは、健康保険料や厚生年金保険料、また給付額や年金額などの計算の基礎となる
標準報酬月額の定時決定の提出期間です。
 この時期、企業の経営者様や人事・総務担当者様は、忙しい日々が続くのではないでしょうか。

 この標準報酬月額の定時決定の手順としては、「算定基礎届」に必要事項を記載していくことにより進めます。
4月、5月、6月の3ヶ月間に支払われた報酬総額を平均する(その月数で割る)ことにより求めますが、
その3ヶ月間の対象月のうち支払基礎日数が17日未満であった月については、その報酬額とその月を
分母、分子から除いて計算します。

 「支払基礎日数」とは給料計算の対象となる日数のことをいい、日給制や時給制の場合は出勤日数が
支払基礎日数となりますが、月給制や週給制などの場合には日曜も含む暦日(月給制ならその月の全日数、
週給制なら7日)となります。

 上記が通常の標準報酬月額の算出方法なのですが、場合によっては通常の算定方法では算定が困難であったり、
算出された標準報酬月額が著しく不適当な状況も起こり得ます。具体的には、
@ 3月までに支払われるべき報酬の支払いが遅れ、その分が4月〜6月に支払われたとき、または、
  4月〜6月に支払われるべき報酬の一部が遅れ7月以降に支払われたとき
A 3月分以前にさかのぼる昇給があり、数ヶ月分の差額が4月〜6月に一括で支払われたとき
B ストライキによる賃金カットがあったとき、または4月、5月、6月のいずれかの月に低額の休職給が支払われたとき

の場合です。
 こうした月を標準報酬月額の算定対象月としてしまうと、被保険者の方の報酬の実態とかけ離れていまい
該当者に不利益をもたらす結果となってしまいます。
 そこで、上記の場合には会社が算定を行うのではなく保険者が標準報酬月額の算定を行うこととなっています。
これを保険者算定といいます。

 加えて、平成23年4月からは、
◆4月、5月、6月に支払われた報酬の平均額、つまり通常の方法で算出された標準報酬月額と、
◆前年7月から当年6月までの間に支払われた報酬の月平均による標準報酬月額との間に
2等級以上の差が生じ、その差が業務上例年発生することが見込まれる場合にも、この保険者算定が
適用されることになりました。

 会社によっては4月から6月の年度初めの時期に仕事量が多く、残業が多くなるという業種もあると思われます。
このように、たまたま残業によって報酬が多くなった時期を標準報酬月額の算定対象月とするのも不当に
なりかねないとされ、保険者算定の対象事項に追加されたものです。

 この場合には、前年7月から当年6月までの間に受けた報酬の月平均がその被保険者の方の報酬額となります。

この保険者算定を申立てるには、
@ 保険者等に対する理由を記載した申立書…4月から6月にかけての業務量が多くなる理由など
A 前年7月から当年6月までの被保険者の報酬額等を記載した書類
B 被保険者の同意書
 が必要となります。

 なお、以下の被保険者の方については定時決定を行う必要はありません。
(1) 6月1日から7月1日までに被保険者資格を取得した方
(2) 7月から9月までのいずれかの月から随時改定または育児休業を終了した際の改定が行われる方



標準報酬月額の定時決定等において、保険者算定が適用される場面が追加されています。

 通常方法による算定方法では著しく不当となる標準報酬月額について保険者が算定しその額を決定します。
…追加された保険者算定対象項目へ

健康保険法上の被扶養者とは?

 新しく入社した従業員に被扶養者がいる場合、または結婚や出産など被扶養者に異動があった場合には、
「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。
…対象者の範囲、認定基準など

パートさん等の標準報酬月額 定時決定における特例

 標準報酬月額を算出する際の定時決定では、原則的に4月・5月・6月のうち報酬支払基礎日数が17日以上の
月を対象に行われますが、短時間就労者の方については特例的に15日以上の月を対象にすることになっています。
…算定基礎届の作成における特例

出産費用の負担軽減のための「直接支払制度」

 妊婦さんやそのご家族が出産費用を支払うためにあらかじめまとまった現金を用意しなくてもいいように、
被保険者やその被扶養者の方に対してではなく、医療機関に対して出産育児一時金を支払う「直接支払制度」が、
平成21年10月より始まっています。
…未対応の医療機関もありますのでご確認ください。

傷病手当金 資格喪失後の給付

 会社を辞め健康保険の被保険者でなくなっても一定の要件を満たしていれば、それまで受給していた
傷病手当金を継続して受けることが出来ます。これを「資格喪失後の継続給付」といいます。
…生活を保障する安心の制度です。


 この他にも社会保険の手続や制度には様々なものがあり、提出する書類も非常に多く、健康保険からの給付の種類も
多岐に及びます。場合によっては障害年金や遺族年金など年金からの給付もあるでしょう。
 人事・総務担当者の方にとっては給与計算と並んで気を使うお仕事ではないでしょうか。

 毎年7月10日までに提出する算定基礎届(健康保険料、厚生年金保険料を算出する元となるもので、4月〜6月に
支給された報酬により標準報酬月額を算定する定時決定)の作成も顧問契約内の一業務として行わせていただきますので、
社会保険手続はぜひ当事務所にお任せください。

メールフォーム(ご契約前の相談もお気軽にどうぞ。)

新着情報&更新情報

平成26年3月23日更新しました…年金法改正点
国民年金の任意加入中の保険料未納期間が合算対象期間に算入されることになります。
平成26年3月14日更新しました…給与計算サポート
今まで適用されていた育児休業期間中にくわえ、産前産後休業期間中も社会保険料が免除されます。
平成26年3月8日更新しました…労働・社会保険ニュース
新しい給料を即時に標準報酬月額に反映させる同日得喪が、60歳以上の継続再雇用者に拡大適用されています。
平成25年4月1日…労働・社会保険ニュース
会社判断が廃止され希望者全員を継続雇用制度の対象とすることが求められています。
平成25年2月28日…健康保険法・国民健康保険等改正点
外来療養、指定訪問看護での医療費についても支払い額が一定の限度額までとなるしくみが始まっています。
平成23年10月25日…人事労務管理のポイント
離職票記載内容が事実と異なる場合には補正願の提出が必要です。
平成23年10月24日…労働者災害補償保険法改正点
石綿による遺族特別給付金の請求期限が延長されました。
平成23年7月2日…労働・社会保険ニュース
一定の要件を満たせば、パートタイマーや派遣社員など有期契約労働者の方も育児休業を取得できます。
…社会保険手続
標準報酬月額の定時決定等において、保険者算定が適用される場面が追加されています。
…労働・社会保険ニュース
事業主と同居の親族・家族従業者の方の雇用保険、労災保険への加入について、その基準をまとめました。
…人事労務管理のポイント
東日本大震災にかかる休業手当・労災保険などへの対応を、厚生労働省発表のQ&Aからまとめました。
…年金法改正点
東日本大震災に対処するため特別に施行された、年金に関連する主な法律をまとめました。
…年金法改正点
障害年金における子の加算額および配偶者に係る加給年金額の受給要件が緩和されました。
…労働・社会保険ニュース
年金支給の開始年齢引き上げが検討されます。
…人事労務管理のポイント
非常勤や契約社員、嘱託社員など短時間労働者の方の社会保険適用の基準をご説明いたします。
…人事労務管理のポイント
退職する労働者の方から請求があった場合には、使用者は一定の事項を記載した退職証明書を遅滞なく交付しなければなりません。
…労働・社会保険ニュース
勤務先の労働保険加入状況をインターネットで確認できるようになりました。
…人事労務管理のポイント
国民年金保険料は、退職(失業)による特例免除制度があります。
…労働・社会保険ニュース
事業主が雇用保険の被保険者資格取得の届出をしなかったことにより雇用保険に未加入のままであった従業員の方については、一定の要件を満たすことにより2年を超えて過去にさかのぼり被保険者期間として認められます。

■法律改正や保険料率等の改定、その他人事・労務に関する情報を更新していきます。


各法律改正点

社会保険労務士 山田泰則

社会保険労務士 山田泰則 企業と働く方の幸せのために頑張ります。さいたま市、戸田市、川口市、蕨市を中心に活動しております。
経営者の方のみならず、従業員の方や退職された方にとっての身近な相談者であり続けたいと考えています。
どうぞお気軽にお声を掛けてください。


メルマガ購読・解除
お役立ち情報をお届けします!社労士発行の労働・社会保険、年金ニュース

読者購読規約
>> バックナンバー
powered by まぐまぐ!
 
メールマガジンを配信しています。
分かりやすく、読みやすい内容を
心がけました。
ご購読、お待ちしております。

人事労務管理のポイント