労働基準法改正点…労働管理における重要な法律の改正点

 労働組合法、労働関係調整法と並ぶ労働三法の一つである労働基準法が改正され、割増賃金等に関する
新たな基準が適用されています。
 労働基準法は労働者の労働における最低基準を定めたもので、違反している場合は罰金刑などもあり得る
強行法規で、主に労働時間や代替休暇、有給休暇に関するものなど、労働者の健康を確保する観点から
改正が行われました。

@限度時間を超える労働に対する割増賃金率を
定めることが義務付けられました。

労働時間、割増賃金の計算には慎重さが求められます。 …労働基準法上、時間外労働が許されるのは、原則として時間外・休日労働協定
(いわゆる36協定)を締結、届け出た場合に可能となりますが、この場合でも1週間に
15時間まで、1ヶ月に45時間までというように限度時間が決まっています。

 ただし、この限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない「特別な事情」
生じた時には、その旨を明らかにする文言を時間外・休日労働協定に記載することにより
限度時間を超える労働時間が可能となります。
 今改正はこの限度時間を超える労働時間について、割増賃金率を定めるよう求めています。
この「特別な事情」とは、例えば製造業などで通常の生産量を大幅に超える受注が集中し、特に納期がひっ迫した
場合などが該当します。

A限度時間を超える時間外労働の割増賃金率は、
2割5分を超えるよう努めることとされています。

賃金台帳 従業員の給与計算は慎重に行いましょう。…通常の場合、時間外・休日労働協定を締結した事業場で時間外労働をさせた場合の
割増賃金率は、最低でも2割5分と定められています。
 しかし、例えば上記@のように事業所において特別な事情が発生し、ある月において
1ヶ月の時間外労働の限度である45時間を超えるような時間外労働が行われた場合には、
その45時間を超える部分について2割5分を超える割増賃金率を定める努力をするよう
規定されました。

 ただしこの改正点は文字通り努力義務であり、絶対的な義務ではありません。だからといって守らなくてもいい
訳ではなく努力することは必要ですし、努力がない場合には努力義務違反ということになります。
 ただ、現在の経済情勢下で、経営状況も思わしくない企業において割増賃金率を上げることはなかなか難しいと
いうケースも相当にあると思われます。
 検討し努力はしたけれども現状では困難であるという場合は、2割5分のままでもやむを得ないという判断も
あり得ます。

B限度時間を超える時間外労働は、
出来るだけ短くするよう努めることとされました。

時間外労働や従業員の労働時間管理には、人事労務担当者として常に気を配りたいものです。 …実は労働基準法下では、この限度時間を超える延長時間、すなわち特別延長時間に
ついては限度となる時間は示されておらず、労使当事者間の自主的決定にゆだねられて
います。
 ただ、限度時間を超える延長時間を協定する場合にも、例えば、1ヶ月80時間とか
90時間とするのではなく、出来るだけ60時間とか50時間とか短く協定するように
努めなさいと定められました。

 厚生労働省でも今回の改正の趣旨として、「時間外労働は本来臨時的なものとして必要最小限にとどめられるべき
ものであり、特別な事情がある場合などに行う限度時間を超える時間外労働は、その中でも特に例外的なものとして、
労使の取り組みによって抑制されるべきもの」と述べています。

C1ヶ月60時間を超える時間外労働に対しては、使用者は
50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

経営者と労働者 信頼関係を築くことが人事労務管理の第一歩です。 …時間外労働に対する割増賃金の支払は、通常の勤務時間とは異なる特別の労働に対する
労働者への補償を行うとともに、使用者に対し経済的負担を課すことによって時間外労働を
抑制することを目的とするものです。

 このため、特に長い時間外労働を強く抑制することを目的として、1ヶ月について
60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた労働についての割増賃金率を
現行の2割5分以上の率から5割以上の率へ引き上げられています。

      なお、以下に該当する中小事業主の事業については、当分の間2割5分以上で構いません。

業種資本金の額または出資の額または常時使用する労働者数
小売業5,000万円以下または50人以下
サービス業5,000万円以下または100人以下
卸売業1億円以下または100人以下
その他3億円以下または300人以下
              ・事業場単位ではなく、企業全体で判断されます。
              ・業種分類の詳細につきましてはこちらをご覧ください。

D1ヶ月について60時間を超えて時間外労働を行わせた労働者について、
労使協定を結ぶことにより、Cによる割増賃金率の引き上げ分の割増賃金を支払う代わりに、
有給の休暇を与えることが出来るようになりました。

有給休暇カレンダー 健康管理、リフレッシュのためにも効果的な有給取得をお勧めします。 …1ヶ月につき60時間を超える時間外労働について、割増賃金率を最低でも5割以上に
引き上げることになりましたが、だからといって法で定められた割増賃金を支払えば
何時間でも働かせてよいという訳にはいきません。

 そこで今改正では、特に長い時間外労働をさせた労働者に休息の機会を与え健康を
確保する観点から、労使間で労使協定を結ぶことにより割増賃金を支払う代わりに
一定の割合に基づいて一定日数、一定時間の代替休暇を与えることが出来るように
なりました。
 この労使協定を設けることによって、個々の労働者は割増賃金分の給与をもらうか代替休暇を取得するかを
選択することができます。
 また、この制度も上記Cと同様に、中小事業主の事業については当分の間適用されません。

 代替休暇制度を利用するには労使による協定を結ぶ必要があり、割増賃金率や代替休暇を取得できる期間、
代替休暇の単位などを決定しなければなりません。
 詳細につきましては当事務所までお気軽にご連絡ください。

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■法律改正や保険料率等の改定、その他人事・労務に関する情報を更新していきます。


各法律改正点

社会保険労務士 山田泰則

社会保険労務士 山田泰則 企業と働く方の幸せのために頑張ります。さいたま市、戸田市、川口市、蕨市を中心に活動しております。
経営者の方のみならず、従業員の方や退職された方にとっての身近な相談者であり続けたいと考えています。
どうぞお気軽にお声を掛けてください。


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